相続・事業承継について
個人の方の相続
この記事の目次
- 1. 相続させる立場にある方へ
- 2. 相続する立場にある方へ
- 3. 年々増えている相続のご相談
- 3-1. 誰がどのくらいの財産を相続するか
- 3-2. 誰がどのような財産を相続するか
- 3-3. 遺留分の問題
- 4. 相続を弁護士に相談するメリット〜相続をさせる立場にある方へ〜
- 4-1. 誰に何を相続させるか
- 4-1-①. 内容を決めるための2つの方法
- 4-1-②. 遺言の種類・書き方
- 4-1-③. 無効にならないように注意
- 4-2. 特定の相続人には相続させたくない場合(廃除)
- 4-3. 相続税負担への配慮
- 5. 相続を弁護士に相談するメリット〜既に相続が発生した相続人の方へ〜
- 5-1. 遺産としてどのような財産があるのかがわからない
- 5-2. 遺言の内容に納得がいかない
- 5-3. 遺産分割協議書に疑問点が多く納得がいかない
- 5-4. 遺産としての借金を引き継ぎたくない
1. 相続させる立場にある方へ
ポイント
- 子どもたちにどうやって財産を相続させるか決めておくことも親の責任
- 相続のアドバイスは相続税に強い税理士と弁護士に依頼すると心強い
自分の死後に遺産を巡って子供たちが争うことになったときのことを想像してみてください。
親としてはそのような結果は決して望まないはずです。ところが、小さい時からいつも一緒にいて仲が良かった子供たちがご自身の死後、残された遺産の取り分をめぐって争いになることは珍しくありません。さらには遺産をめぐって争いになるだけではなく、お互いに憎しみ合って関係が悪化し、今後、一生涯、口を利かない仲になることもあるのです。
そうならないように対策を立てることも、財産を子供たちに相続させる親の責任と言っても過言ではありません。
もちろん、家族のありかたは多種多様です。そのため、相続のありかたもなにか1つの答えがあるわけではありません。みなさんがお子さんたちにどのようにご自身の財産を相続させたいのか、また配偶者の方をどのように支えていくのかをじっくりお考えください。
弁護士壇一也がみなさんのご意向を踏まえて、その結果を実現するためにはどのような方法を取ればよいかを一緒に考え、アドバイスをさせていただきたいと思います。
また、相続の際には相続税の対策についても一緒に考えなければなりません。相続税に詳しい税理士さんと協力し、またご紹介することで法務の面だけではなく税務の面からの不安を解消できるように努めたいと思います。
ポイント
- 子どもたちにどうやって財産を相続させるか決めておくことも親の責任
- 相続のアドバイスは相続税に強い税理士と弁護士に依頼すると心強い
2. 相続する立場にある方へ
ポイント
- 相続で問題となる事柄は様々
- 遺産分割に納得が行かない場合は、弁護士にアドバイスをもらうべき
たとえば、親が亡くなられて相続が発生したものの、
① 遺産としてどのような財産があるのかがわからない
② 遺言で兄弟姉妹のうち1人だけが遺産の大半を取得することになってしまったが納得がいかない
③ 兄弟姉妹の1人から遺産分割協議書が一方的に送り付けられてきたがその内容については疑問点が多く納得がいかない
④ 財産はなく借金だけが残っており、債権者からそれを支払うように求められているが支払いたくはない
などと様々な悩みや不安が生まれることは珍しくありません。弁護士壇一也は、相続人が抱えられた悩みや不安を解消するためにどのように動けばいいのかを一緒に考え、アドバイスをさせていただきたいと思います。
ポイント
- 相続で問題となる事柄は様々
- 遺産分割に納得が行かない場合は、弁護士にアドバイスをもらうべき
3. 年々増えている相続のご相談
ポイント
- 相続の割合は同じでも、相続する財産の種類で揉めることが多い
- 遺言書を作成する際は、遺留分を考慮して作成することが大事
相続は、時に「争族」と言われることがあります。
ただし、それは事前に「争族」対策をしていなかったことに大きな原因があります。
では「相続」が「争族」になるのはどうしてなのでしょうか。
以下、その理由について簡単にご説明します(わかりやすいように相続人がお子さんだけの場合を想定してご説明します)。
3-1. 誰がどのくらいの財産を相続するか
法律では、お子さん1人1人の相続分は決められています。
基本的にはそれぞれの相続分は同じです。相続人がお子さん3人の場合は、3人のお子さんは3分の1ずつ相続することになります。
なお、相続人が配偶者とお子さん3人である場合は、配偶者が2分の1で、お子さんは6分の1ずつ(=2分の1×3分の1)を相続することになります。
ところが、お子さんの中には「自分が一番親の面倒を看てきた」「他の兄弟姉妹は生前たくさんの財産を親から受け取っていた」などと主張し、自分の相続分を多くしたいと考える人が出てくることも珍しくありません。
もちろん、お子さん同士が話し合って、それぞれが相続する財産を決めることは自由です。
その場合、うち1人だけが他の相続人よりも多く相続しても何ら問題ありません。ただし、このように話し合いがうまくまとまる保証はありません。
逆に「いや、自分こそが一番親の面倒を看てきた」などと言って、お互いの言い分が真っ向から対立することも珍しくありません。
3-2. 誰がどのような財産を相続するか
お子さんそれぞれが相続する財産の割合が同じであったとしても、そのうえで遺産のうちどの財産を相続するかでもめることがあります。
たとえば、1000万円の現預金と評価額1000万円の不動産があったとします。財産の評価額としては同じなのですが、現実的な価値は異なることもあります。
仮に、不動産が辺ぴな場所にある土地であった場合、利用価値はないうえに、額面は1000万円の評価が付いても実際には1000万円で売却できる可能性は小さいことが多く、その場合、お子さんの誰もがこの土地を相続したいとは考えません。
そのため、お子さんは誰もが現預金1000万円を相続したいと考えて意見が対立しトラブルになるのです。
逆に、その土地が開発著しい地域に存在している場合には、将来評価額が上がり1000万円以上の価値となる可能性もあります。その場合は、お子さんの誰もがその土地を相続したいと考えて意見が対立しトラブルになることもあります。
3-3. 遺留分の問題
今日では遺言という制度も社会に浸透しているため、遺言を残される方も多くなりました。
しかし、遺言を作成したからあとは安心というわけにはいきません。
それは遺留分という制度があるからです。「遺留分」とは、簡単に言えば、遺言でも奪うことができない相続人の最低限の取り分のことです。
この遺留分があるため、みなさんが、お子さんの中で「長男に全財産を渡したい」とか「最後まで面倒を看てくれた娘に財産の大半を渡したい」との遺言を残しても、他の相続人が遺留分侵害を主張すれば、結局「争族」になってしまいます。
遺言を残すことは、上記のようなトラブルを回避する方法となるため、非常に有効ですが「遺留分」に配慮をしない場合には、その遺言が原因でさらなるトラブルを生む可能性もあります。
以上のようなことからも「争族」対策についてはできるだけ早い時期に取り組んでおく必要があります。
ポイント
- 相続の割合は同じでも、相続する財産の種類で揉めることが多い
- 遺言書を作成する際は、遺留分を考慮して作成することが大事
4. 相続を弁護士に相談するメリット
〜相続をさせる立場にある方へ〜
ポイント
- 法律問題・相続税・贈与税など専門的知識が必要
- 遺言は、自分で手書きで書くか、公証役場で作成してもらうことが一般的
- 特定の人に相続をさせたくない場合は法律上「廃除」という制度を検討
- 相続税の負担を減らす方法についても考えておく必要がある
相続については、上記のような問題が含まれているために早期に取り組むことの他、弁護士や税理士などの専門家の協力のもとに進める必要があります。
なぜなら、相続は、専門的でかつ広範囲な法律問題を含んでいるだけではなく、相続税や贈与税などの税務上の問題も多分に含んでいるからです。
そのため、相続については「できることならば専門家に相談して進めたほうがいいというよりも、必ず専門家に相談して進めるべき」といえます。
主として、以下の点を弁護士や税理士に相談しながら対策を進めていく必要があります。
4-1. 誰に何を相続させるか
4-1-①. 内容を決めるための2つの方法
まず、誰に何を相続させるかを考えることが一般的です。その方法としては大雑把に申し上げれば2つの方法があります。
1つ目は、具体的に「自宅不動産は長男、現預金は次男、投資用マンションは長女」などと、お子さんたちがそれぞれ相続する財産を指定する方法です。
2つ目は、「相続財産のうち長男が6分の3の割合で、次男が6分の1の割合で、長女が6分の2の割合で」相続させると指定し、その割合の範囲で具体的にどのような財産をお子さんたちが相続するかはお子さんたちの話し合いで決めさせるという方法です。
このようにして誰にどのような財産を相続させるかについては、遺留分を侵害しないように(あるいは、相続人同士の関係やこれまでの被相続人への貢献などから遺留分の侵害の程度が小さくなるように)配慮していれば、お子さんたちの相続分が同じでなくても問題はありません。
4-1-②. 遺言の種類・書き方
そして、このように誰に何を相続させるかを決めたら、それを遺言として残すことをお勧めします。遺言にはいくつかの種類がありますが、
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
のいずれかが利用されることが一般的です。
①自筆証書遺言は、文字通り、ご自身で遺言内容全文(誰にどのような財産を相続させるかなど)、遺言を作成した日付、ご自身の氏名を手書きしなければなりません。そして、ご自身の押印も必要です。
「自筆」ですからワープロ書きなどで記載することはできません。ワープロ書きが許されないなんて、イマドキではないのですが、法律で決められた条件ですから厳守しなければなりません。
また「自筆」ですからご自身で手書きをしなければなりません。他の人に代筆してもらうことはできないのです。
②公正証書遺言は、公証役場で作成する遺言のことです。公証役場については、あまり馴染みはないかもしれませんが、公証人という法律の専門家が常駐しているところです。公証役場は主たる都市には所在しています(たとえば、福岡県内であれば、天神(正確には中央区舞鶴)、博多、太宰府、飯塚、直方、久留米、大牟田、小倉(小倉駅近く)、八幡、田川、行橋に所在しています)。
公証役場では、公証人がみなさんが考える遺言の内容を聴き取って、法律的に間違いがないような遺言を作成してもらうことを期待することができます。
また、この公正証書遺言による場合には、遺言内容を自筆する必要もないため、文字を書けない人でも遺言を残すことができます。
さらに、身体が不自由な方については公証人が自宅や病院まで出向いてくれます。このようなことから、遺言を残す場合には、①自筆証書遺言ではなく②公正証書遺言によることをお勧めします。
ただし、公正証書遺言による場合には、公証人に対する手数料を支払わなければなりませんし、必要書類を用意して公証人に提出しなければなりません。さらには、公正証書遺言を作成する場合には、2人の証人を立ち会わせる必要があるため、証人を通じて遺言内容が漏れるという可能性もゼロではありません。
4-1-③. 無効にならないように注意
このように誰にどのような財産を相続させるかを考える場合には、遺留分に配慮したうえで、どのような内容の遺言を作成するのかを検討しなければなりません。
また、自筆証書遺言による場合には、その遺言が無効とならないように注意しなければなりません。
このような検討をご自身で行うことは簡単なことではありませんので、是非とも弁護士にご相談いただければと思います。
また、公正証書遺言による場合にも必要書類を揃え、みなさんが考える遺言の内容が公証人に正確に伝わるようにするためには弁護士によるサポートがあった方がより好ましいと思います。
4-2. 特定の相続人には相続させたくない場合(廃除)
これまでご説明してきたとおり、相続人には相続権があり、さらに遺言でも奪うことのできない取り分である遺留分があります。
そのため、相続人が遺留分を主張する場合には、特定の相続人に相続をさせないということは原則としてできません。
もっとも、例外的に、特定の相続人の相続資格を奪う方法が法律上認められています。その1つが「(推定相続人の)廃除」という方法です(民法892条、893条)。
これは、相続人であるお子さんの中に、親(被相続人)に対する虐待や重大な侮辱、または著しい非行があったと裁判所が認めたときに、そのお子さんの相続資格を奪うという制度です。
もっとも、最低限の相続分である「遺留分」すらも奪う制度であるため、裁判所がこの廃除を認める場合は多くはありません。
なお、この廃除の方法は、ご自身が存命中に家庭裁判所に請求する方法と、遺言に特定の相続人を廃除する旨を記載する方法があります。遺言に記載する場合は、ご自身が亡くなられた後(相続が始まった後)、遺言執行者がその相続人の廃除を家庭裁判所に請求する必要があります。
このような廃除の手続は裁判所での事実認定などが必要となるためにご自身で行うことは簡単ではありません。仮に、遺言で廃除をする場合であっても、それが認められる可能性が高くないにもかかわらず、廃除すると記載してしまえば、逆に相続人に手間をかけさせ、無用なトラブルを引き起こしてしまうこともあります。
このようなことから、もし、特定の相続人には相続させたくないとお考えの場合は、それが裁判所に認められる可能性があるかどうかを慎重に検討したうえで行う必要があります。廃除をお考えの場合は弁護士に相談されることをお勧めします。
4-3. 相続税負担への配慮
相続財産が大きければ大きいほど、相続税の額も大きくなります。特に、平成27年1月1日以降に発生した相続については、それまでより相続税を負担する場合が多くなり、また負担すべき相続税の額も多額になりました。
そのため、相続が発生した場合にお子さんたちがどの程度相続税を負担することになるのかを事前に把握しておく必要があります。そして、お子さんたちの負担を減らすために相続税を減らす方法についても考えておく必要がある場合もあります。
なかには誰が何をどのくらい相続するかについては揉めなかったものの、相続税額が大きすぎてその支払い方法で苦労するという場合も少なくはありません。
相続税について検討するためには税理士さんに相談することが一番ですが、弁護士に相談をすれば相続税対策に強い税理士さんを紹介してもらうこともできます。
相続にあたっては検討すべき課題はたくさんあり、しかもそれは法律的にも税務的にも専門性が高いものばかりです。その意味では、相続については弁護士などの専門家に是非ともご相談ください。
ポイント
- 法律問題・相続税・贈与税など専門的知識が必要
- 遺言は、自分で手書きで書くか、公証役場で作成してもらうことが一般的
- 特定の人に相続をさせたくない場合は法律上「廃除」という制度を検討
- 相続税の負担を減らす方法についても考えておく必要がある
5. 相続を弁護士に相談するメリット
〜既に相続が発生した相続人の方へ〜
ポイント
- まずは遺産の内容を調査し把握
- 遺言によって財産を全く相続できない場合、その人は最低限の取分(遺留分)を主張することができる
- 相続放棄をすることで、借金を引き継がないで済む
5-1. 遺産としてどのような財産があるのかがわからない
亡くなられた方が具体的にどのような財産をお持ちであったかがわからないケースも少なくありません。そのような場合には、まずは遺産の内容を把握することから始めなければなりません。
そのためには亡くなられた方の生前の情報を元に、法務局や金融機関などに問い合わせをして、その方の名義の不動産や預貯金があるか否か、あるとしてどこにどのような不動産や預貯金があるかなどを調査する必要があります。
ところが、その調査は簡単ではありません。調査のために、まずはあなたご自身が亡くなられた方の相続人であることを証明する必要があります。また、法務局や金融機関などへの問い合わせも手続が面倒であるだけではなく、専門的な知識を要求されるため、ご自身で行うことはかなりの時間、手間、苦労を伴います。
弁護士であれば、みなさんからお伺いした亡くなられた方の生前の情報を元に、無駄なく効率的に遺産の調査を行うことができます。
5-2. 遺言の内容に納得がいかない
昨今では、亡くなられた方が遺言を残されるケースも少なくありません。
ただし、遺言の内容が相続人の1人に遺産の大半を相続させる内容であったり、逆に、特定の1人には遺産を全く相続させないという内容であったりすることも少なくはありません。
仮に、そのような内容に納得がいかない場合には、遺留分の侵害を主張して、遺留分減殺請求権を行使することができます。
「遺留分」とは、簡単に申し上げれば、遺言によっても奪うことができない相続人の最低限の取り分のことです(ただし、亡くなられた方の兄弟姉妹の方には「遺留分」は認められておりません)。
この遺留分減殺請求権は、大雑把に申し上げれば、相続が始まったことを知った日から1年以内に行使しなければなりません。
また、それを行使したこともきちんと形に残る方法で行う必要があります。また、遺留分減殺請求権を行使した後も、他の相続人との間で侵害された遺留分を取り戻すための交渉を行わなければなりません(その中では遺産である不動産をどのように評価するかなどの難しい問題が発生することも少なくありません)。
このように遺留分に関する主張については、法律で決められた期限があることや専門的な知識が必要であることから、是非とも弁護士にご相談いただきたいと思います。
5-3. 他の相続人が示してきた遺産分割協議書案に疑問点が多く納得がいかない
相続が発生した場合、他の相続人から遺産分割協議書案がいきなり送られてくることもあります。
その内容について納得がいかないこともあると思います。
たとえば、相続人同士のそれぞれの取り分が違っている場合の他にも、相続人同士の取り分が同じであっても、亡くなられた方が存命中に一部の相続人だけが多額の金銭的援助などを得ていた場合などには安易に相手が示してきた遺産分割協議書案に応じるべきではないと思われます。
また遺産分割協議書案の内容については概ね納得できたとしても、遺産が多額であるときは一度弁護士に相談された方が好ましいと思われます。
5-4. 遺産としての借金を引き継ぎたくない
遺産は、必ずしもプラスの財産ばかりというわけではありません。時には借金しかなかったり、プラスの財産と借金が混在している場合もあります。
通常、遺産として借金しかなく、その額も多額で相続人が支払っていくことが困難な場合は、「相続放棄」の手続をすることでその借金を引き継がないで済むことができます。
一方で、遺産として借金の他、プラスの財産も存在する場合には、通常通り、すべての遺産を相続人が相続する方向で協議を進めるか、「限定承認」という方法を取って、相続で得たプラスの財産の限度で借金を引き継ぐこともできます。
いずれにしても、遺産を相続人ですべて相続する方向で検討するか、相続放棄をするか限定承認をするのかについては、多分に難しい判断を強いられます。
相続放棄や限定承認については裁判所での手続が必要で期間が制限されていたり、特定の行為をしてしまうと相続放棄などをできなくなる場合もあります。
その意味では、相続が発生し、遺産に借金が存在する場合には弁護士に相談されることをお勧めします。
ポイント
- まずは遺産の内容を調査し把握
- 遺言によって財産を全く相続できない場合、その人は最低限の取分(遺留分)を主張することができる
- 相続放棄をすることで、借金を引き継がないで済む