2018年12月20日
コラム
【賃貸借契約:建物明渡請求、立ち退き交渉⑥】どのような場合に立退料は発生するのか(立ち退き交渉に強い福岡の弁護士による無料相談受付中です)。
こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です。
今回も、具体的に立退料の支払が問題となった事例について簡単にご説明します。
事案の概要(東京地裁平成元年6月19日判決)
建物について
1 所在場所 東京都
2 建物の構造等 築15年の鉄骨造のビル
賃貸借契約の内容について
1 賃料 月額10万円
2 賃借目的 事務所
3 賃貸部分 2階部分の一部
裁判所はどのような判断をしたか。
結論
裁判所は、賃貸人の解約申入れには「正当事由」が認められないとして、賃貸人の明渡請求を認めませんでした。
理由
1 賃貸人側の事情
①賃貸人は、不動産業者であり、本件建物を取り壊して再開発をするために直近になって取得した。
②賃貸人は、賃借人に対し本件建物からの立退きを申し出るに際し、立退料として1660万円の他、代替物件の紹介をした。
2 賃借人側の事情
①賃借人は、本件建物において十数年出版業を営んでいる。
②賃借人は、本件建物からの退去を拒否しているとおり、本件建物を引き続き使用する必要性が認められる。その意味では、本件建物使用の必要性は、賃貸人に比べると大きいというべきである。
コメント
本件で、裁判所は、「正当事由」は認められないとして、賃貸人の請求を認めませんでした。
その理由としては、本件建物の老朽化といった事情がないこと、本件建物を賃貸人が再開発目的で取得していること、本件建物で賃借人が引き続き出版業を継続する必要性が認められることなどが挙げられています。
もちろん、実社会においては、再開発のために不動産業者が不動産を取得して、賃借人に対し明渡しを求めることは珍しいことではありません。この場合、立退料などの条件で賃借人との間で話し合いがまとまれば、明け渡しを求めることができます。
しかし、本件のように賃借人が明渡しに応じない場合には、裁判手続を利用することになりますが、その場合であっても、必ず明渡しが認められるというわけではありません。どんなに多額の立退料の支払いを提示しても「正当事由」が認められない場合もあるのです。
賃貸人や不動産業者としては、このようなリスクも考えてそもそも不動産を取得すべきか、その場合にどのような条件で明渡しを求めるか(立退料のみならず、立ち退きの時期をどうするかなど)を事前に十分に検討しておく必要があります。
弁護士壇一也は、正当事由に関連した建物明渡交渉や訴訟手続を数多く扱っております。
建物賃貸借契約のことでお困りの方はいつでもご相談ください!!(初回の相談料は無料です)なお、賃貸人、賃借人のどちらの方からのご相談もお受けしております。