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2019年03月01日

コラム

【マンション、アパートなどの建物明渡請求、立退き交渉⑦】どのような場合に立退料は発生するのか(立ち退き交渉に詳しい福岡の弁護士による無料相談受付中です)。

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です。

今回は、立退料の支払が問題となった事例について簡単にご説明します。

事案の概要(東京地裁平成19年12月27日判決)

建物について

1 所在場所 東京都

2 建物の構造等

①建築時期 昭和35年

②建物の構造 3階建ての建物

賃貸借契約の内容について

1 賃料   月額80万円

2 賃借目的 自動車修理工場

3 賃貸部分 建物1階部分と仮設建物部分

なお、建物2階部分に賃貸人夫妻が居住し、3階部分は空室となっている。

裁判所はどのような判断をしたか。

結論

裁判所は、賃貸人の解約申入れには「正当事由」が認められないとして、賃貸人の明渡請求を認めませんでした。

なお、賃貸人は、解約申入れに際し、立退料として1000万円を提示していました。

理由

1 賃貸人側の事情

①賃貸人とその妻は、大正12年生まれの高齢の夫婦である。また、妻はうつ病を患い通院加療中であり、要介護1に認定されている。

②本件建物は耐震性に問題があり、大地震で崩壊の危険性があることから建替えの必要性はある。

③以上から、本件建物を建替えて、賃貸人夫婦の長女夫妻が同居して、賃貸人夫婦を介護支援する必要性がある。

④本件建物建替え後は、賃借人が修理工場として使用することは認めないが、事務所として使用することは認める。

2 賃借人側の事情

①賃借人は、昭和50年頃から本件建物において修理工場を営んでおり、同所は本社機能をも有している。なお、賃借人は、その他にも複数の事務所や工場を有している。

②本件賃貸借契約締結後も、本件建物において賃貸人は2階部分、賃借人は1階部分で共存し、賃借人として特段問題となるような行動はなかった。

③賃貸人夫婦の長女夫妻は、本件建物3階部分で居住し介護支援することもできる。

④賃借人が本件建物から退去することで修理工場として利用できなくなるが、賃貸人から賃借人に対し修理工場の移転先を提案した事実はない。

→以上からすると、賃借人による本件建物使用の必要性は、賃貸人に比べると大きいというべきである。

コメント

本件で、裁判所は「正当事由」は認められないとして、賃貸人の請求を認めませんでした。

その理由としては、本件建物の老朽化は認められるものの、賃借人が本件建物で30年以上営業を継続していることからすれば移転による不利益が大きいこと、賃貸人夫婦は本件建物で長女夫妻からの介護支援を受けながら生活していくことも可能であることなどを上げています。

もっとも、本件は、立退料の金額や賃貸人が修理工場として他の候補先を紹介するなどすることによって「正当事由」があると判断された可能性もあります。

賃貸人としては、このような問題も考えて立ち退き交渉にあたるべきだと言えます。是非とも参考になさってください!


 

弁護士壇一也は、正当事由に関連した建物明渡交渉や訴訟手続を数多く扱っております。

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