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2019年03月10日

コラム

【マンション、アパートなどの建物明渡請求、立退き交渉⑧】どのような場合に立退料は発生するのか(立ち退き交渉に強い福岡の弁護士による無料相談受付中です)。

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です。

今回は、立退料の支払が問題となった事例について簡単にご説明します。

事案の概要(東京地裁昭和59年2月28日判決)

建物について

1 所在場所 東京都

2 建物の構造等

①建築時期 昭和12年頃

②建物の構造 木造瓦葺2階建て

賃貸借契約の内容について

1 賃料   不明

2 賃借目的 自宅兼営業事務所

3 賃貸部分 本件建物の一部(詳細は不明)

裁判所はどのような判断をしたか。

結論

裁判所は、賃貸人の解約申入れは、立退料150万円の提供により「正当事由」が具備されるとして、賃借人に明渡を命じました。

理由

1 賃貸人側の事情

①本件建物の老朽化はかなり進んでおり、東京都の区長から老朽化のため除却、改築、大規模修繕等の勧告を受けてから約7年が経過している。

②賃貸人は、本件建物について一部修繕を行っているが、これはあくまで一時的な措置であり、全面的に修復することは困難であると認められる。

③本件建物の他の入居者からは一部の者を除いて既に明渡しを受けている。

④賃貸人は、賃借人に対し立退料として120万円を支払うを提案している。

2 賃借人側の事情

①賃借人は、本件建物に約40年間居住している。

②賃貸人が本件建物の取壊し後の利用についてそれほど差し迫った具体的な事情があるとは認められない。

→以上からすると、賃貸人の解約申入れについては「正当事由」としてなお十分ではないが、その不十分な点は立退料150万円の支払によって補完しうる性質のものである。

コメント

本件で、裁判所は、賃貸人の解約申入れについて、直ちに「正当事由」を認めることはできないが、立退料150万円を支払うことで補完できると判断し、最終的には明渡しを命じました。

この点、賃貸人が支払うと提案した立退料は120万円ですが、裁判所はそれよりも30万円多い150万円の立退料を支払うように命じています。これはあくまでも30万円であれば、賃貸人の意思にも合致すると裁判所が判断していることが大前提としてあります。

たとえば、賃貸人が120万円の支払を提示していて、裁判所が「それでは足りないから1000万円を支払いなさい」ということは、賃貸人の意思に明らかに反すると思われ、認められないと考えられます。

賃貸人としては、立退料を提示する場合に、最悪どのくらいの金額までは譲歩できるかということも念頭において交渉、裁判に臨むべきと言えます。是非とも参考になさってください!


 

弁護士壇一也は、正当事由に関連した建物明渡交渉や訴訟手続を数多く扱っております。

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