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2019年03月22日

コラム

【マンション、アパートなどの建物明渡請求、立ち退き交渉⑨】どのような場合に立退料は発生するのか(立ち退き交渉に詳しい福岡の弁護士による無料相談受付中です)。

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です。

今回は、立退料の支払が問題となった事例について簡単にご説明します。

事案の概要(大阪地方裁判所昭和59年7月20日判決)

建物について

1 所在場所 大阪市

2 建物の構造等

①建築時期 判決時点で築50年以上が経過

②建物の種類 長屋(4戸1棟)

③建物の構造 木造平屋建

賃貸借契約の内容について

1 賃料   月額5200円(地代家賃統制令の適用あり)

2 賃借目的 自宅

3 賃貸部分 本件建物の一部(詳細は不明)

裁判所はどのような判断をしたか。

結論

裁判所は、賃貸人の解約申入れは、立退料150万円の提供により「正当事由」が具備されるとして、賃借人に明渡しを命じました。

理由

1 賃貸人側の事情

①本件長屋の老朽化はかなり進んでおり、木造住宅としての安全性を欠いており、抜本的な修理費用は約590万円かかる。

②本件長屋のうち中央2戸は昭和47年頃、他の1戸は昭和50年頃に賃借人が退去して、それ以降空屋となっている。

③上記①と②からすると、経済的には賃貸人に修理を要求するのは酷であり、長屋を建て替える方が好ましい。

④賃貸人は、賃借人に対し立退料として100万円を支払うを提案している。

2 賃借人側の事情

①長屋のうち賃借人が居住する部分については、住居としての効用はなおも有していること

②長屋のうち中央の2戸については昭和53年頃に賃貸人が適切な応急的な修理をしておけば、長屋の耐用年数は2~3年延びていたと考えられること

③賃貸人には長屋を取り壊してその敷地を使用する差し迫った事情は存在しないこと

④賃借人は、本件建物に30年の長期にわたり居住しており、本件建物を使用する必要性は小さくはないこと

→以上からすると、賃貸人の解約申入れについては「正当事由」としてなお十分ではないが、その不十分な点は立退料150万円の支払によって補完しうる性質のものである。

コメント

本件で、裁判所は、賃貸人の解約申入れについて、直ちに「正当事由」を認めることはできないが、立退料150万円を支払うことで補完できると判断し、最終的には明渡しを命じました。

この点、賃貸人が支払うと提案した立退料は100万円ですが、裁判所はそれよりも50万円多い150万円の立退料を支払うように命じています。これはあくまでも50万円であれば、賃貸人の意思にも合致すると裁判所が判断していることが大前提としてあります。

たとえば、賃貸人が100万円の支払を提示していて、裁判所が「それでは足りないから1000万円を支払いなさい」ということは、賃貸人の意思に明らかに反すると思われ、認められないと考えられます。

賃貸人としては、立退料を提示する場合に、最悪どのくらいの金額までは譲歩できるかということも念頭において交渉、裁判に臨むべきと言えます。是非とも参考になさってください!


 

弁護士壇一也は、正当事由に関連した建物明渡交渉や訴訟手続を数多く扱っております。

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