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2019年04月01日

コラム

【マンション、アパートなどの建物明渡請求、立ち退き交渉⑩】どのような場合に立退料は発生するのか(立ち退き交渉に強い福岡の弁護士による無料相談受付中です)。

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です。

今回は、立退料の支払が問題となった事例について簡単にご説明します。

事案の概要(東京地方裁判所昭和61年5月28日判決)

建物について

1 所在場所 東京都(新橋駅前)

2 建物の構造等

①建築時期 判決時点で建築後60年を経過

②建物の構造 鉄筋コンクリート造5階建

賃貸借契約の内容について

1 賃料   不明

2 賃借目的 店舗兼事務所

3 賃貸部分 本件建物の1階部分

裁判所はどのような判断をしたか。

結論

裁判所は、賃貸人の解約申入れは、立退料3億4000万円の提供により「正当事由」が具備されるとして、賃借人に明渡しを命じました。

理由

1 賃貸人側の事情

①本件建物は老朽建物であって、耐震安全性は十分ではなく、これを補強するためには4930万円程度の費用を要する。

②本件建物については老朽化が進んでおり、賃貸人が本件建物の賃借人と建物明渡の交渉を進めた結果、他の賃借人は全員退去ないし退去することに同意している。

③本件建物は、土地の高度利用が望ましい新橋駅前に所在し、かつその再開発計画が進んでおり、賃貸人はその計画を実行するために必要な資金について融資を受けることが決定している。

④賃貸人は、賃借人に対し立退料として6741万円を支払うことを提案している。

2 賃借人側の事情

①賃借人は本件建物で20年以上飲食店を経営してきた。

②本件建物から退去して、他所で営業を行ったとしても直ちに従前どおりの売上を得ることは困難である。

3 結論

以上からすると、賃貸人の解約申入れについては「正当事由」としてなお十分ではないが、その不十分な点は立退料3億4000万円を支払うことによって補完しうる性質のものである。

コメント

本件で、裁判所は、賃貸人の解約申入れについて、直ちに「正当事由」を認めることはできないが、立退料3億4000万円を支払うことで補完できると判断し、最終的には明渡しを命じました。

本判決は、新橋駅前という好立地に本件建物が所在することを重視していることがポイントとして挙げられます。従前は、土地の高度利用のための明け渡しが認められるかという問題がありましたが、最近は、これを認める裁判例も増えてきたようです。

もっとも、この場合については、賃借人が立ち退きによって被る経済的損失を十分に補償することが求められると言えます。


 

弁護士壇一也は、正当事由に関連した建物明渡交渉や訴訟手続を数多く扱っております。

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