2017年12月09日
コラム
【判例紹介】NHKの受信料問題の行方は?(無料相談受付中です)
こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)
社団法人日本放送協会、いわゆるNHKの受信料問題について、平成29年12月6日、最高裁判所が受信料制度は憲法に違反しないという判断を示しました。
この最高裁判決について簡単にご説明したいと思います。
受信料制度の法律問題はどこに原因があるのか?
放送法64条1項には次のような規定があります。
(受信契約及び受信料)
第六四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。(略)
「協会」とは、NHKのことです。
放送法64条1項は、受信設備(テレビなど)を設置した人は、たとえ、NHKと受信契約を締結したくない場合であっても、受信契約を締結しなければならない、と言っているのです。
つまり、テレビを設置した人は、NHKとの受信契約の締結を強制されるということです。要するに、NHKの番組を見ない人(=NHKのサービスの提供を受けない人)も受信料を支払わなければならないということになります。
しかし、これは民法の契約締結の自由に反するものであることは明らかです。
そのため、放送法64条1項は、憲法が保障する「契約の自由」に反するとして、裁判所で争われることになったのです。
最高裁判所の判断は?
この問題について、最高裁判所は、次のように判断しました。
1 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない。
2 放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,その者に対して承諾の意思表示を命ずる判決の確定によって受信契約が成立する。
1について
まず、最高裁は、放送法64条1項の規定は、NHKがその役割を果たすために受信料を適切・公平に徴収をするための制度を定めたもので、必要かつ合理的な範囲内のものだと判断しました。
なお、NHKの目的については放送法15条では、次のように定められています。
(目的)
第一五条 協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。
2について
次に、最高裁は、テレビを設置した人が受信契約の締結を望まなくても、NHKが訴訟を提起し、裁判所が判決を下すことによって契約が成立する、つまり受信契約の締結が強制されると判断しました(正確には、その判決が確定することで受信契約が成立する)。
つまり、民法の大原則である、契約締結の原則についての例外を認めたのです。
NHKの受信料問題はどうあるべきか?
このように最高裁が判断したことで、NHKの受信料問題については、一応解決を見ました。
しかし、このような最高裁の判断については、批判が多いことも事実です。
弁護士の立場からすれば、契約締結を強制されることはやはり違和感を覚えざるを得ません。
また常識的にも、NHKの放送を見ないのに(NHKのサービス提供を受けないのに)、毎月受信料を支払わなければならないというのもおかしな話です。
この点は、今後、国民的議論の中で、法律の改正により解決されるべきではないかと考えています。