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2018年01月13日

コラム

【介護事業:介護事故②】介護事故(転倒事故)が発生した場合、社会福祉法人などの介護事業者はどのような責任を負うのか?(福岡の弁護士による無料相談受付中です)

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)

今回は、介護の際に利用者が転倒して怪我をされたという事案について、裁判所がどのような判断をしたのかを簡単にご説明します(横浜地裁平成17年3月22日判決)。

事案の概要

介護老人保健施設でデイサービスを受けていた高齢の利用者が施設内のトイレで転倒して右大腿骨頚部内側骨折の傷害を負いました。

その後、入通院治療を続けましたが、重篤な後遺障害が残りました。そのため、利用者がその施設を運営する社会福祉法人に対し合計約4000万円を請求しました。

この利用者は、施設の職員によるトイレ内への同行介護を拒絶して、自分一人でトイレに向かった際にこの転倒事故が起こってしまったという事案です。

裁判所の判断

裁判所はどのような結論を出したか?

裁判所は、施設側の責任を認めました。

ただし、同行介護を拒絶した利用者にも過失があったとして、3割の過失相殺を認めました。

そのうえで、裁判所は、施設側に利用者に対し合計約1250万円を支払うように命じました。

裁判所はどのような理由でこのような結論を出したか?

①利用者は、障害者用トイレに入る際、職員の同行を拒絶したというが、本件トイレは入り口から便器まで1.8メートルの距離があり、手すりがないなどの理由からトイレ内で転倒する危険があるので、職員としては、利用者を説得して利用者が便器まで歩くのを介護する義務があったというべきである。それにもかかわらず、これをすることはなく利用者を1人で歩かせたことについては安全配慮義務違反があったと言わざるを得ない。

利用者が介護を拒否したとしても、職員としては、意を尽くして転倒等の危険を説明し、介護を受けるよう説得すべきでありそれでもなお真摯な介護拒絶の態度を示したような場合でなければ、介護義務を免れることにはならない。

③職員は、利用者に対し、介護の必要性を説明しておらず、介護を受けるように説得もしていないのであるから、職員は介護義務を免れる理由はない。

一方で、

④利用者は、施設職員にトイレ内部での歩行介護について求めることはせず、かえって「自分一人で大丈夫だから。」と言って、内側より自らトイレの戸を閉め、単独で便器に向かって歩き、誤って転倒したのであるから、利用者にも3割の過失が認められる。

コメント

確かに、利用者が同行介護を拒絶していることからすれば、施設側に責任を負わせることは酷とも思われます。利用者さんの中には、恥ずかしさなどからトイレ内への同行を拒絶される場合があることも珍しくはありません。

しかし、介護施設側としては、介護の専門知識を持つプロとして、安易に利用者の要望を受け入れるべきではない場合も少なからず存在します。つまり、利用者の身体の状態やトイレ内の状況などから、利用者一人で歩かせた場合に転倒する危険を予測できた場合には、それを避けるために説得などして、さらに一定の介入をすべき場合もあります。

本件では、利用者が転倒する危険を予測できたにもかかわらず、安易に利用者の要望を受け入れたことに問題があるとされた事案で、日常の介護にあたって参考になると思われます。


 

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