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2018年01月20日

コラム

【介護事業:介護事故③】介護事故(転倒事故)が発生した場合、社会福祉法人などの介護事業者はどのような責任を負うのか?(福岡の弁護士による無料相談受付中です)

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)

今回は、前回に引き続き、介護の際に利用者が転倒して怪我をされたという別の事案について、裁判所がどのような判断をしたのかを簡単にご説明します(大阪高裁平成18年8月29日判決)。

事案の概要

特別養護老人ホームでショートサービスを受けていた高齢の利用者Xさんが、他の利用者Aさんに車椅子を押されて転倒し、後遺障害が残りました。

そのため、Xさんがその施設を運営する社会福祉法人に対し合計約1500万円を請求しました。

この利用者Xさんは、施設側に事故を未然に防止できなかった安全配慮義務違反などがあったと主張しました。なお、車椅子を押した他の利用者Aさんは、92歳で要介護3の認定を受け、また認知症の状態にありました。

裁判所の判断

裁判所はどのような結論を出したか?

裁判所は、施設側の責任を認め、施設側に利用者側に対し合計約1000万円を支払うように命じました。

裁判所はどのような理由でこのような結論を出したか?

①施設側には、事業者の義務として、サービスの提供にあたり、利用者の生命・身体の安全に配慮する義務がある。

Aさんは、以前から他人の物を自分の物と間違えることがあり、施設側もそれを認識していた。

Aさんは、本件事故直前においても、Xさんの車椅子を自分の物と勘違いし、これを揺さぶりXさんの背中を押すなどしていた。それにもかかわらず、施設の職員は、Aさんを自室に戻らせただけであった。施設側は、Xさんを他の部屋や階下に移動させるなどして、Aさんから引き離し、接触できないような措置を講じて、Xさんの安全を確保し事故を未然に防ぐべきであったにもかかわらず、これをしなかった点は、安全配慮義務違反があると言わざるを得ない。

コメント

確かに、本件は、他の利用者の行為により発生した事故であるため、その責任を施設に負わせるのは酷とも思われます(実際、この事件の第一審の裁判所は、Xさんの請求を認めませんでした)。

しかし、第二審の裁判所は、AさんがXさんの車椅子を自分の物と勘違いし、その結果、Xさんに危害を加える可能性があったことを重視しました。危害を加える可能性があった以上、それを避けるために十分な措置を取らなかった介護施設側の責任は免れないとしたのです。

前回ご説明した転倒事故についても言えることですが、介護事業者としては、利用者の生命・身体に危険が及ぶ可能性を予測できる場合には、それを避けるために十分な処置をとる必要があります。

本件も、AさんがXさんに押すなどしてXさんが転倒する危険を予測できたにもかかわらず、それを避けるための処置をしなかったことに問題があるとされた事案で、日常の介護にあたって参考になると思われます。

このような事故を避けるためには、職員の方への教育が必要であることは言うまでもありませんが、十分な人員を確保しておくことも必要になります。


 

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