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2018年01月27日

コラム

【介護事業:介護事故④】介護事故(転落事故)が発生した場合、社会福祉法人などの介護事業者はどのような責任を負うのか?(福岡の弁護士による無料相談受付中です)

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)

今回は、病院に入院中であった方が転落して死亡されたという事案について、裁判所がどのような判断をしたのかを簡単にご説明します(東京地判平成8年4月15日判決)。

事案の概要

病院に入院中であった高齢のVさんが、ベッドから転落して側頭部を強打し、くも膜下出血で亡くなられました。Vさんは軽度の認知症でした。

そのため、その遺族Xさんが病院に対し合計1000万円を請求しました。

遺族のXさんは、Vさんが数日前にもベッドから転落したことがあったことなどから、病院側には転落防止義務違反などがあったと主張しました。

裁判所の判断

裁判所はどのような結論を出したか?

裁判所は、病院側の責任を一部認め、病院側にXさんに対し慰謝料として200万円を支払うように命じました。

裁判所はどのような理由でこのような結論を出したか?

①病院側には、入院中の患者に一定の危険が生じることが予測される場合、その結果発生を防止するための義務を負う。ただし、その義務の具体的な内容については、病院側の専門的判断に基づく裁量が認められることから、予測される結果の重大性や、結果発生を防止する措置の容易性、有効性等を考慮して決定されるべきである。

②Vさんは、従前から認知状態にあったことからベッド上に立ち上がることがあったこと、本件事故の数日前にもベッドから転落したことがあった。そのため、Xさんも病院側に対し転落防止のための措置を取るように申し出ていた。

③このようなことからすると、病院側には、Vさんがベッドから転落することを防止するのに有効な措置を取る一定の義務があった。

④もっとも、転落防止のために転落防止帯を使用したり、ベッドの使用をやめて病室に畳を敷き寝具を置くような措置を取ることは、当時の病院やVさんの状況からして必ずしも容易なこととは言えなかった。

⑤一方で、Vさんの部屋の巡回を頻繁にする方法は、患者の様子を注意して見守るという看護の基本に適った方法であり、かつ比較的容易に実行できることから、病院側は、巡回の頻度を増やして転落防止に努める義務に違反したというべきである。

⑥もっとも、巡回の頻度を増やしたとしても、Vさんの転落を防止できたとは限らないため、病院側の義務違反とVさんの死亡との因果関係は否定すべきであるが、Vさんが適切な看護を受ける機会を奪ったと言え、その点について不法行為が成立し、慰謝料200万円の支払い義務が認められる。

コメント

本件は、介護施設ではなく、病院に入院中の患者さんについての事例です。

裁判所は、入院中の患者の生命身体に危険が及ぶ可能性が予測される場合には、病院側にはそれを防止するための一定の義務が認められるとしました。もっとも、病院側に無理を強いるわけにもいかないことから、結果発生防止のために有効で、現実的かつ容易な措置をとる義務があると判断しています。

本件も、日常の介護にあたって参考になると思われますのでご紹介させていただきます。


 

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