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2018年02月03日

コラム

【介護事業:介護事故⑤】介護事故(転落事故)が発生した場合、社会福祉法人などの介護事業者はどのような責任を負うのか?(福岡の弁護士による無料相談受付中です)

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)

今回は、介護施設で利用者がベッドから転落して後遺障害が残ったという事案について、裁判所がどのような判断をしたのかを簡単にご説明します(大阪地判平成19年11月7日判決)。

事案の概要

グループホームに入居中であった高齢のXさんが、ベッドから転落して、左大腿骨転子部を骨折し、後遺障害(10級)が残りました。Xさんは認知症でした。

そのため、Xさんがグループホームに対し合計約3400万円の損害賠償請求しました。

Xさんは、自身が以前からベッドから転落したことが何度もあったにもかかわらず、グループホーム側が転落防止のための措置を取らなかった点、またXさんが転落した事実をXさんの家族に知らせていなかった点などが安全配慮義務違反にあたると主張しました。

裁判所の判断

裁判所はどのような結論を出したか?

裁判所は、グループホーム側の責任を認めました。

裁判所は、一方で、Xさんが認知症であったことなどが原因で障害の改善が進まず、10級の後遺障害が残ったとして、Xさんに5割の素因減額を認めました。

そのうえで、裁判所は、グループホーム側にXさんに対し約570万円を支払うように命じました。

裁判所はどのような理由でこのような結論を出したか?

①グループホーム側は、法令上及び契約上、介護事業者として、利用者の生命身体に危害が及ばないように事故防止のために必要な措置を尽くすべき義務(安全配慮義務)を負っている。また、契約上、グループホーム側は、介護にあたって利用者の介護上の情報を提供し、利用者や家族らと協議し、場合に応じて事故防止のために十分に協議を尽くすべき義務を負っている。

Xさんは、本件転落事故の前から、何度もベッドから転落していた

このようなことからすると、グループホーム側は、転落事故防止のための具体的な有効策を講じる必要があった。また、グループホーム側は、その転落の事実をXさんの家族に知らせて、転落防止策の検討のために協議することを検討すべきであった。このような義務を尽くしていないグループホーム側には安全配慮義務違反等が認められる。

一方で、

④本件転落事故による負傷についての手術前の所見では、順調にいけば、杖で歩行ができるほどまでに回復する可能性を指摘されていたにもかかわらず、10級の後遺障害が残ったのは、認知症のXさんが骨折していることを忘れている状況で、術前及び術後に無理な行動をとるなど不穏行動が多々認められたこと、Xさん自身がリハビリに意欲的に取り組むことがなかったことが影響していることは否定できない。このことからすると、損害の公平の分担の観点からは、5割の素因減額を認めるべきである。

コメント

本件は、介護施設に入居中の利用者がベッドから転落された事例ですが、これまでご説明してきた事例と同じく、ベッドから転落する危険が予測できる場合には、介護施設側にその防止のための措置をとる義務があったと判断されました。

これに加え、裁判所は、契約上、利用者がベッドから転落をした場合には、そのご家族にもその事実を説明すべき義務があったと判断しています。確かに、転落の事実をご家族が知った場合には、転落防止のために介護施設側と協議することができますし、さらには、ご家族としても転落事故を防止するために面会の回数を増やしたり、場合によっては、この介護施設から退去させるなどの措置をとることができたはずです。

その意味では、介護施設側がご家族に利用者さんの日頃の状況を伝えることが重要だと考えさせられる事例でもあります。

本件も、日常の介護にあたって参考になると思われますのでご紹介させていただきます。


 

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