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2018年03月04日

コラム

【介護事業:介護事故⑨】介護事故(失踪事故)が発生した場合、社会福祉法人などの介護事業者はどのような責任を負うのか?(無料相談受付中です)

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)

今回は、介護施設の利用者が山中での作業中に行方不明となった事案について、裁判所がどのような判断をしたのかを簡単にご説明します(鹿児島地方裁判所平成18年9月29日判決)。

事案の概要

社会福祉法人が営む知的障害者更生施設に通所中であったVさん(当時19歳)が社会福祉法人が管理する山中の作業所で保護訓練を受けている間に行方不明となり、その後5年経過しても行方不明の状態が続きました。

そのため、Vさんの両親Xが社会福祉法人等に対し損害賠償として合計約3350万円を請求しました。

Xは、㋐作業所からVさんが行方をくらましたことについて施設側に過失が認められる、㋑作業所から行方をくらました後40~50分してから捜索に着手した点についても施設側に過失が認められる、㋒施設側の㋐や㋑の過失のためにVさんが5年以上も行方不明となったままであることからXは多大な精神的苦痛を被ったとして慰謝料や弁護士費用が損害にあたるなどと主張しました。

裁判所の判断

裁判所はどのような結論を出したか?

裁判所は、社会福祉法人側の責任を一部認め、Xに合計約1600万円を支払うように命じました。

裁判所はどのような理由でこのような結論を出したか?

①Xの主張㋐について

施設側は、知的障害者更生施設という施設の性格上、利用者の指導及び訓練に際し、利用者の知的障害の程度に応じてその身に生じうる危険を予見して、これを回避するための適切な措置をとるべき注意義務を負っている。

本件作業所は、施設から4キロメートル離れた山林地域の山頂付近に位置し、その周囲には急な下り斜面があって利用者が滑落、転落する危険性があるだけではなく、利用者がひとたび山中等に踏み込めば帰路を見失って遭難する危険性もあった。

それにもかかわらず、本件事故当時、作業所の周囲にはこれらの危険を防止するための塀、柵等の遮蔽物が一切設けられていなかった。

このような状況で作業を行わせる以上、施設側にはより一層高度な注意義務が要求されていたところ、施設側は、Vさんが自己の管理下から離れることがないようにその動静を絶えず把握する義務に違反したというべきである。

②Xの主張㋑について

Vさんの所在が知れなくなってから40~50分経過した時点で捜索に着手した点についても、施設側が速やかに行方を捜索すべく適切な措置をとるべき義務に違反したというべきである。

③Xさんの主張㋒について

上記㋐や㋑の施設側の過失により、Vさんは5年以上に及んで生死不明の状態が続いており、その間、Xは多大な精神的苦痛を被り続けているとして、慰謝料や弁護士費用として約1600万円を施設側に支払うように命じました。

コメント

本件は、社会福祉法人が運営する知的障害者の作業所において発生した失踪による事故についての事例です。

裁判所は、利用者の精神的状況のほか、作業所の周り環境などから、施設側は、利用者が作業所を離れれば行方不明になる可能性が高いことを予見できたと判断しました。

介護施設の所在場所などから、そこから利用者が離れた場合にその身に危険が及ぶことが予見できる場合には、施設側は、所在不明にならないように注意深くその動静を把握する必要があります。

健常者とは異なり、介護を必要とする利用者は、所在不明になれば、施設に戻ることができないなどしてその身に危険が及ぶことは十分に予測できるからです。

本件のように山間部にある施設の他、都市部にある施設であっても近くに幹線道路があるなどする場合には、施設から離れれば利用者が事故に遭うことは十分に予測できるといえます。

本件も、日常の介護にあたって参考になると思われますのでご紹介させていただきます。


 

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