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2018年06月30日

コラム

【相続:遺留分、遺留分減殺請求④】遺留分を侵害されたいえる具体的な場合とは②?(福岡の弁護士による無料相談受付中です)

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)

今回は、どのような場合に遺留分を侵害されたと言えるのでしょうか。前回に比べ、今回はやや複雑な事例となります。

ケース:一部の相続人だけに多額の財産を相続させる場合

相続関係者

被相続人:父

相続人:その妻と子2人(長男、長女)

遺言の内容

被相続人である父が財産合計8000万円(不動産【時価5000万円】や預貯金等【合計3000万円】)を次のとおり相続させるという遺言を残していた。

①不動産は妻に相続させる。

②長男には残りの財産である預貯金等全部を相続させる。

誰が遺留分をどの程度侵害されたか。

まず、相続人の法定相続分は、妻:2分の1、子:4分の1ずつ、となります。

そのため、もし遺言がない場合には、妻や長男、長女は、この割合で相続することが可能となります。

しかし、上記のような遺言が残っている場合には、長女はまったく財産を相続できないことになります。

ただし、長女には、次のとおり遺留分が認められます。

長女:2分の1×4分の1=8分の1

そのため、長女は、8000万円の財産のうち8分の1、つまり1000万円の遺留分を侵害されたということになります。

では、長女は、誰に対して、遺留分の侵害を主張できるのでしょうか。

というのは、妻の遺留分額は2000万円、長男の遺留分額は1000万円であるため、長女は、妻に対して1000万円を請求することもできそうですし、長男に対して1000万円を請求できそうでもあります。または、妻に200万円、長男に対し800万円を請求するなど、2人合わせて1000万円を請求することもできそうではあるからです。

長女は、誰にいくら請求するかを自由に決めることができるのでしょうか。

ここで、民法1034条には次のような規定があります

(遺贈の減殺の割合)
第1034条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

また、裁判例では、遺言者の相続人が遺贈を受けた場合、遺贈の目的物の価格のうち、受遺者の遺留分を超える部分のみが減殺の対象になるとされています(最一小判平成10年2月26日民集52巻1号274頁)。

つまり、これらを整理しますと、遺留分侵害額は、他の相続人が相続により取得した財産を基準に、その人の遺留分を超えた金額の割合に応じて計算するということです。。。と説明してみましたが、これでもわかりににくいため(笑)、本件で説明すると次のとおりとなります。

妻に請求できる額:600万円

①妻の遺留分額 2000万円

②妻が相続した財産 5000万円

③遺留分を超えて相続した額 3000万円

④計算式 1000万円(長女の遺留分額)×3000万円(妻が遺留分を超えて相続した額)÷5000万円(妻と長男が遺留分を超えて相続した額の合計額)=600万円

長男に請求できる額:400万円

①長男の遺留分額 1000万円

②長男が相続した財産 3000万円

③遺留分を超えて相続した額 2000万円

④計算式 1000万円(長女の遺留分額)×2000万円(長男が遺留分を超えて相続した額)÷5000万円(妻と長男が遺留分を超えて相続した額の合計額)=400万円

このように結論としては、長女は、妻に対しては600万円、長男に対しては400万円しか請求できないということになります。たとえば、妻に対しては請求しづらいなどの理由で、長男に1000万円全額を請求するということはできないということです。


 

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