2018年07月30日
コラム
【相続:遺留分、遺留分減殺請求⑥】遺留分減殺請求の対象となるのは何か??(遺留分問題に強い福岡の弁護士による無料相談受付中です)
こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です(^^)
これまでは遺言で一部の相続人が多額の財産を相続することで、他の相続人の遺留分が侵害された場合には、遺留分減殺請求をできることを前提とした説明をしてきました。
では、被相続人が遺言だけではなく、生前に贈与をして全財産を一部の相続人に取得させていた場合には、遺留分を侵害された人は、遺言と生前贈与について、どちらも遺留分減殺請求をできるのでしょうか。
今回は、被相続人のどのような行為が遺留分減殺請求の対象となるのかを簡単にご説明します。
何が遺留分減殺請求の対象となるのか?
民法の規定や裁判例によれば、以下のものとされています。
①遺贈(民法1031条)
②死因贈与(東京家審昭和47年7月28日家月25巻6号141頁)
③相続開始前1年以内にされた生前贈与(民法1030条前段)
④贈与当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた生前贈与(であれば相続開始の1年以上前にされたものでも対象となります、民法1030条後段)
⑤特別受益にあたる生前贈与等(であれば相続開始の1年以上前にされたものでも対象となります。最三小判平成10年3月24日民集52巻2号433頁)
生前贈与と遺言の2つがあった場合にはどうなるのか?
では、被相続人が生前贈与と遺言の2つの行為をしていた場合にはどうなるのでしょうか。
たとえば、次のような事例ではどうなるのかをご説明します。
相続関係者
被相続人:父
相続人:その妻と子1人
財産の内容
①不動産(評価額2500万円)
②預貯金 7500万円
③合計 1億円
生前贈与と遺言の内容
被相続人は、死亡する半年前に評価額2500万円の不動産を妻に贈与していた。
また、被相続人は、遺言で残りの財産である預貯金7500万円全額を妻に相続させるという遺言を残していた。
子は、妻に対し遺留分減殺請求としてどのようなことを主張できるか。
この場合の子の遺留分は、2500万円(1億円×2分の1×2分の1)になります。
もし、将来値上がりが期待できるなどの理由で、子が妻が生前贈与を受けた不動産を欲しいと考えた場合には、不動産を対象として遺留分減殺請求をできるのでしょうか。
ここで民法1033条には次のような規定があります。
(贈与と遺贈の減殺の順序)
第千三十三条 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。
つまり、この規定によると、子はまずは遺贈について遺留分減殺請求をすべきということになります。そして、それでも子の遺留分を回復できない場合には、生前贈与についても遺留分減殺請求をすることができるということになります。
これを本件で具体的に検討します。
妻が遺贈(≒遺言で相続した)のは、預貯金7500万円です。そのため、子は、この預貯金から自分の遺留分2500万円分を回収することができます。
そのため、子はいくら不動産に魅力を感じて不動産を遺留分減殺請求の対象にしたいと考えたとしてもそれはできないということになるのです。