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2018年11月20日

コラム

【賃貸借契約:建物明渡請求、立退き交渉③】どのような場合に立退料が発生するのか(福岡の弁護士による無料相談受付中です)。

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です。

賃貸借契約において「あの人は立退料をもらって出て行った」とかいう話を聞かれたことがあるかもしれません。

賃貸借契約を終了させる場合に、立退料が常に発生するわけではありません。

では、どのような場合に立退料の問題となるのでしょうか。なお、ここでは賃借人側に賃料不払い等の債務不履行がないことを前提としています。

「正当事由」?

たとえば、借地借家法28条には次のように記載されています。

第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

要するに、借地借家法28条は、賃貸人が解約申入れをするなどして賃貸借契約を一方的に解消する場合には「正当事由」があると認めなければならないと定めているのです。
では、どのような場合に「正当事由」があると認められるのでしょうか。
この点で、最高裁判所は「『正当の事由』とは、賃貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照らし妥当と認めるべき理由をいう」と判断しています(最判昭和29年1月22日など)。
そして、どのような場合に「正当事由」が認められるのかは、裁判所が判断することで、明確な基準があるわけではありません。

「正当事由」と立退料の関係

一般的には「正当事由」は、次の要素を考慮して判断されることになります。

1 賃貸人の事情(賃貸人が建物使用を必要とする事情)

2 賃借人の事情(賃借人が建物使用を必要とする事情)

3 建物の賃貸借に関する従前の経過

4 建物の利用状況

5 建物の現況

6 立退料

そして、正当事由があるか否かは、上記1と2、つまり賃貸人と賃借人がそれぞれ建物を使用する必要性がどこまであるかを基本として考えることになります。

それに上記3~6の要素も補充的に考慮して、正当事由があるか否かが決定されることになります。

つまり、上記1から5(特に1と2)を中心に正当事由があるかが判断され、それだけでは正当事由を認めることは難しい場合に、立退料を支払うことで正当事由が認められることがあるということです。

大雑把な言い方をしますと、たとえば、上記1~5では、正当事由としては70%しか認めることができないという場合に、30%分の立退料を支払うことで「正当事由」が認められるというイメージになると思います。