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2018年12月10日

コラム

【賃貸借契約:建物明渡請求、立退き交渉⑤】どのような場合に立退料は発生するのか(立ち退き交渉に詳しい福岡の弁護士による無料相談受付中です)。

こんにちは!福岡の弁護士の壇一也です。

今回も、具体的に立退料の支払が問題となった事例について簡単にご説明します。

事案の概要(東京高裁昭和41年6月17日)

建物について

1 所在場所 群馬県

2 建物の構造等 木造瓦葺平屋建の建物

賃貸借契約の内容について

1 賃料   不明

2 賃借目的 店舗

裁判所はどのような判断をしたか。

結論

裁判所は、賃貸人の解約申入れには「正当事由」が認められるとして、立退料の支払いを命じることなく、賃借人に明渡しを命じました。

理由

1 賃貸人側の事情

①賃貸人は、元々生活に困窮していたことから家計を補うために本件建物を賃貸した。

②①の賃貸後、賃貸人は本件建物の裏側に所在するベニヤ板の間仕切で区画された不健康と認められる6畳一間に家族4~5人で生活し、不自由な生活を送ってきた。

③賃貸人本人は本件賃貸後に左目を失明し一人前の労働をすることができなくなったことから、一家の生活は長男に頼らなければならない。

④その長男は本件建物で牛乳店を営むことを予定している。

2 賃借人側の事情

①賃借人は、本件建物を自らが経営する会社の店舗として使用しており、営業及び生活の本拠は別に所有している。

②賃借人による本件建物の使用は、自らの営業に付随的なものに過ぎず、いわば副業的になされているものと評価することができる。その意味では、本件建物使用の必要性は、賃貸人に比べると緊切性を欠くというべきである。

コメント

本件で、裁判所は、無条件で「正当事由」が認められるとして、賃借人に対し明け渡しを命じました。つまり、立退料の支払は命じられませんでした。

その理由としては、賃貸人と賃借人による本件建物を使用する必要性を比べた結果、賃貸人による本件建物の使用の必要性が圧倒的に大きいことにあることが挙げられています。

一般的には、立退料の支払が命じられることなく、明け渡しが認められることは少ないと思われます。

本件では、建物を明け渡しを認めないと賃貸人の生活が更に困窮すること、それに比べると賃借人の不利益はそこまで大きくないといった事情が大きかったのだと思われます。


 

弁護士壇一也は、正当事由に関連した建物明渡交渉や訴訟手続を数多く扱っております。

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